皇太后のペンダント・マスク:イヨバ by Unknown Artist - 16世紀 - 23.8 x 12.7 x 6.4 cm 皇太后のペンダント・マスク:イヨバ by Unknown Artist - 16世紀 - 23.8 x 12.7 x 6.4 cm

皇太后のペンダント・マスク:イヨバ

象牙 • 23.8 x 12.7 x 6.4 cm
  • Unknown Artist Unknown Artist 16世紀

ベニン・ブロンズについて聞いたことがありますか?それは、現在のナイジェリア、エド州に存在した西アフリカのベニン王国で15世紀から19世紀にかけて作られた数千点に及ぶ金属製、象牙製の彫刻作品を指し、1897年に英国軍によって略奪されてしまいました。この時の苛烈な遠征で英国軍は街を焼き払い、数知れない人々を殺害。暴力をもってベニン王国の息の根を止めたのです。ベニンの芸術作品は世界中に散らばっていますが、その最大のコレクションは、900点以上(ブロンズ製以外のものも含む)の作品を所蔵するロンドンの大英博物館にあります。近年、ナイジェリアは略奪品の返還を要求し、ドイツとフランスは国が保有してきた作品の返還に向けて動き出しましたが、大英博物館は返還を拒否しています。

今日紹介するのは、16世紀に作られた皇太后イディアの象牙製の肖像。ベニン王国の王(オバと呼ばれる伝統的支配者であり、エドの民の文化の庇護者)の地位を象徴する貴重な象牙製ペンダント・マスク4点の内の1点で、1897年の残虐な遠征の際に英国軍に略奪された傑作の一部です。イディアはビーズの頭飾りとチョーカーを身につけ、額には鉄の象嵌で強調されたスカリフィケーション(訳注:皮膚に切れ込みや焼灼を行った際に形成されるケロイドを利用して肉体に文様を描く身体装飾の一種)が見られます。マスク全体は、シンボリックなオブジェを透かし細工で表現したティアラと襟で縁取られており、両サイドにはペンダントの取り付け穴が2つ付いています。オバ(王)は、母である皇太后の追悼儀式の際にこのマスクを装着したようですが、今日ではこの種のペンダントは、霊的な再生と浄化のための年次儀式で用いられています。イディアは、1504年から1550年にかけてベニンを支配したエシギエ王の母。息子の在位期間以前から幾度となく戦いに赴いた偉大な戦士として記録されており、息子の即位と統治に重要な役割を果たしました。

2月は黒人史の特集月間。祖国を離れ、世界中に離散したアフリカ民族の歴史において重要な人物や出来事に思いを馳せてきました。特集の最後を飾る今日は、ベニン芸術の傑作を通して、西アフリカ沿岸地方の奥地で11世紀頃に建国され、1897年まで続いた、最も古く、かつ最も発展を遂げた国家の記憶をたどりました。

P.S. 今日の作品に魅せられたあなた。皇太后イディアとその肖像の詳細をこちらでご覧ください。