スリー・ティートン by Thomas Moran - 1895年 - 52.4 x 77.5 cm スリー・ティートン by Thomas Moran - 1895年 - 52.4 x 77.5 cm

スリー・ティートン

油彩/カンヴァス • 52.4 x 77.5 cm
  • Thomas Moran - February 12, 1837 - August 25, 1926 Thomas Moran 1895年

トーマス・モランは、ニューヨーク州のハドソン・リバー派に属するアメリカの画家・版画家で、ロッキー山脈を描いた作品を数多く遺しています。有名な海洋画家エドワード・モランは兄にあたり、兄弟でアトリエを共有していました。イラストレーターとしての才能に恵まれ、色彩感覚にも優れたモランは、雑誌『スクリブナーズ・マンスリー』に職を得ました。1860年代後半には、チーフ・イラストレーターに昇格、ここから、アメリカの風景、とりわけアメリカ西部の風景を描く第一人者としてのキャリアをスタートさせたのです。  

モランが描いた西部の風景は、イエローストーン国立公園の創設に重要な役割を果たしました。モランは、1871年にアメリカ地理・地質調査局の局長フェルディナンド・ヘイデン博士率いる、未開のイエローストーンの探検調査隊に招かれます。ヘイデンは探検に出発する直前に、資本家ジェイ・クックから「フィラデルフィアで最も才能のある画家」としてモランの推薦状を受け取ったのです。人跡未踏の地での40日間にわたる探検行の間に、モランは30ヶ所以上の風景を描き、探検の進捗と日々の活動を記した日記を遺しました。モランのスケッチや、同行した写真家
ウイリアム・ヘンリー・ジャクソンの写真は人々の関心を集め、1872年に議会がイエローストーンを最初の国立公園に指定するのに貢献しました。モランをはじめとして、アルバート・ビアスタット、トマス・ヒル、ウイリアム・キースらの画家はアメリカ西部の風景を多く描いたことで、「ロッキー・マウンテン派」とも呼ばれています。
 
モランの絵とジャクソンの写真は、文字や言葉では伝えきれないイエローストーンの壮大さを雄弁に物語り、グラント大統領と議会にイエローストーンを保護するように促したのです。イエローストーンは、画家のキャリアにも大きな影響を及ぼしました。モランが画家として広く認知され、経済的にも大きな成功を収めたのはイエローストーンのおかげでもあります。作品に入れるサインも「T-Y-M, Thomas "Yellowstone" Moran」に変えました。イエローストーンを世間に知らしめた1年後に、西部の自然の驚異を描いた初の大作『イエローストーンの大峡谷』は、人々の想像力をかき立て、1872年に1万ドルで政府に買い上げられました。その後20年間にわたって、モランは数々の雑誌で作品を発表すると共に、数百に及ぶ大作を手がけました。『イエローストーンの大峡谷』の2つのバージョン (1893–1901年と1872年制作) と『コロラドの峡谷』 (1873–74年制作)をはじめとする何点かは、現在スミソニアン・アメリカ美術館で展示中。今日紹介した『スリー・ティートン』は ホワイトハウスに飾られています。
 
- クリントン・ピットマン
 
P.S.  21世紀のグランド・ツアーに関するコラムはこちら。各地の風景に興味がある方は是非ご一読を。