AB79 by Zdzisław Beksiński - 1979年 - 87x87 AB79 by Zdzisław Beksiński - 1979年 - 87x87

AB79

油彩 ファイバーボード • 87x87
  • Zdzisław Beksiński - February 24, 1929 - February 21, 2005 Zdzisław Beksiński 1979年

ズジスワフ・ベクシンスキー は20世紀から21世紀にかけてポーランドで活躍したシュールレアリズム、幻想的レアリズムの巨匠です。この作品を見るとわかるように、彼の絵はミステリアスで魅惑的です。

『The AB79』はもっとも有名な作品ですが、一人息子のトマシュのために描かれました。トマシュは80年代にニュー・ロマンチックス・ミュージックのラジオパーソナリティとして有名になりました。しかし音楽業界での成功とは裏腹に彼は鬱病に苦しみ、死ぬことへの興味を募らせていきます。1977年、18歳の頃には自分の死亡記事を作成して街に掲示したりもしました。そして20歳になって、ついに自死を試みます。

トマシュの自殺願望と深刻な人間不信はズジスワフ・ベクシンスキーの心にも深い傷跡を残しました。「トマシュと私は同じボートに乗っていた。そのボートが滝に向かっているのは2人とも知っていたんだ。同じボートの中でトマシュはサボテンのトゲの上に座ることを夢想していたけれど、私はアームチェアに腰掛けることに憧れていた。だから彼は自分からボートを飛び降りたんだ。直ちにね。」

この絵はトマシュの自殺願望と深いつながりを感じさせます。荒野の2匹の狼は炎に取り囲まれています。狼たちは飛び立つ気球を見つめています。気球には「Nevermore (これっきり)」の文字。これは彼が愛読したエドガー・アラン・ポーの詩『大鴉』からの引用ですが、トマシュの心境でもあったでしょう。この絵はトマシュが所有していましたが、1999年のクリスマス・イブに彼が自殺をした後はサノク美術館に寄贈されました。

P.S. ズジスワフ・ベクシンスキーの“地獄郷”シュールレアリズムの世界はこちらをご覧ください。