黄金色の椅子に座り、花火を手にしている若い王妃。伝統的な真珠のアクセサリーをつけて横顔を見せる彼女の美しさが、夜の闇の中で控えめに強調されています。画家は、花火から生じた煙が、らせん状に立ち昇りながら空に消えていくさまを優美に表現しています。王妃の背後に控える5人の侍女が持っているのは、”スラヒ”(杯)、”モルチャル”(孔雀の羽でできた泡立て器)、ろうそく、ハエ払い、ワイン用のお盆、パンダン(植物の一種)といった品々です。
これはディワリの一場面。ディワリは5日間にわたって行われる祭りで、ヒンドゥー教徒にとっては最も大切な年中行事です。グレゴリオ暦の10月か11月頃に行われ、ヴィシュヌ神と女神ラクシュミーが、それぞれ伝説の都アヨーディヤーのラーマ王子、その妻シーターとして降臨するラーマーヤナの伝説を祝います。ラーマーヤナは、ラーマ王子が、誘拐された妻シーターを救うために壮大な戦いに挑み、14年間の亡命生活の後にアヨーディヤーに生還する物語。アヨーディヤーの臣民たちは、敬愛する王子と王女の幸運を祈り、その王国への帰途を無事に導くために、オイル・ランプで家々を飾りました。
ラクシュミーはディワリの期間中、地上を歩き回ると信じられています。信徒たちは家をオイル・ランプで照らしてラクシュミーを迎え入れ、女神がもたらす幸運と富にあやかろうとするのです。通常、ディワリの初日と3日目に行われるラクシュミー・プージャー(ラクシュミーへの祈り)は、ディワリには欠かせません。ラクシュミーは富と幸運をもたらしてくれるとヒンドゥー教徒は信じているので、この時期になると人々は買い物や賭け事をするのを常としています。
P.S. 富の女神ラクシュミーは、芸術作品に多用されるモチーフです。