このドラマチックな絵画は、古代ギリシャの詩人ホメロスの叙情詩「オデュッセイア」の、英雄オデュッセウスの旅路のエピソードを描いています。1891年のロイヤルアカデミー展覧会カタログでは、ホメロスの物語は次のように要約されています。
セイレーンは、全ての航海士を遭難させてしまうほどの美しい歌声で…古い言い伝えによれば、鳥の身体に、美しい女性の顔を持つ生き物だったということです…彼女たちの滅びの歌を気に留めず過ぎ去る者がいれば、すぐに神託によってそのことを知らされました。ユリシーズ(ローマ名はオデュッセウス)はキルケの警告を受け、仲間たちの耳を(蝋で)塞ぎ、自分自身は船の帆柱に結びつけさせました。そしてなんとか危険な航路を乗り切ったのでした。
しかしホメロスは、セイレーンの見た目について具体的には叙述していません。ウォーターハウスは自身の描写の信憑性を高めるために、ロンドンの大英博物館にある古代ギリシャの瓶に描かれたホメロスの物語を絵画にすることにしました。その瓶でセイレーンは、人間の顔に、翼と爪を持つ鳥の姿で描かれています。ウォーターハウスはそれを引用し、ヴィクトリア時代の人々を驚かせました。人々は、美しい人魚のような妖精の姿で描かれるセイレーンを見慣れていたからです。
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