エウロペの略奪 by Valentin Serov - 1910年 エウロペの略奪 by Valentin Serov - 1910年

エウロペの略奪

油彩 •
  • Valentin Serov - 19 January 1865 - 5 December 1911 Valentin Serov 1910年

王女エウロペに恋をしたゼウスは、彼女が友人と海辺を歩いているところへ美しい雄牛の姿で現れました。エウロぺたちは雄牛の角を花冠で飾って遊び、楽しい時を過ごしました。そしてついにエウロぺが雄牛の背に乗ると、雄牛は海へ飛び込んで、彼女をクレタ島へと連れ去ってしまいました。そこで彼女はゼウスの妻となり、のちに3人の英雄を産みました。この神話では、ゼウスは黄金の角をもつ白い雄牛だとされていますが、セローフはゼウスを赤茶色で描いています。まるで古代ギリシャの赤絵式陶器を思い起こさせる色です。雄牛のゼウスは、美しいエウロぺを欲望のまなざしで見つめています。エウロペの姿はとてもリアルです。セローフは、エウロペの複雑な思いを巧みに表しています。彼女の姿勢には一切の恐れはありません。ゼウスの角を握る手元で、ゼウスへの信頼と、自分自身の運命へ対する気持ちがわかります。それと同時に、低く下げた頭、縮こまらせた身体、海岸へとめいっぱい伸ばした腕から、友人や家族が暮らす故郷との別離の苦しさが伝わってきます。

本日の作品はロシア美術館のご協力のもとお届けしました。来月も特別なものを用意していますのでお楽しみに!

P.S. ゼウスの恋人はエウロペ一人ではありませんでした。他の恋人について知りたい方はこちら