『読書に疲れて』はコローの作品の中でも特に注目に値する作品です。彼が牧歌的な風景画ではなくこのような人物画を発表するのは極めてまれなことだったからです。より自然な姿を描くためコローは閉ざされたアトリエの中でモデルに向かいました。この絵は内省的でどこかメランコリック。まさにロマン主義の真髄に迫るものです。19世紀、女性が読書している様子は神々しいイメージで描かれることが普通でした。しかしコローは本から目をあげた瞬間を描いています。数年にわたるイタリア生活でコローはイタリア的なものをこよなく愛するようになり、モデルにもしばしばイタリア風の装いをさせました。今日ご紹介した作品もそうです。この作品、主題は古典的ですがそのテクニックは革新的です。真っ直ぐで力強い筆遣いで彼は人体をバランスのとれた構造体として描こうとしています。それを補っているのが細部の細やかなディテール。髪のリボン、華奢なイヤリング、スカートの深いヒダなどが丁寧に描かれています。構図への深い理解と、彼の風景画の特徴でもある優しさや親しみやすさとの融合が感じられる作品です。
P.S. 彼女が何を読んでいるのか興味津々ですが、あまり面白い本では無さそうですね。休日にぴったりな美術書はこちら。退屈な本じゃないことは保証します!