ファートゥルマ (憂鬱)

ポール・ゴーギャンがフランスからタヒチへ、すなわちこの絵が描かれた地へと旅立つ前までの間に、自然主義的でない色遣いや形の使い方は、既に作風の一部となっていました。南太平洋で芸術を一新したいと思っていたゴーギャンにとって、そこは近代ヨーロッパの都市文化とは全く逆の、謎と魔法に満ちた地上の楽園でした。題名であるファートゥルマ (Faaturuma) は、この絵の額縁の左上の角に彫られた言葉からとられています。タヒチ語で曇り空を表す言葉ですが、ゴーギャンは心の苦しみを暗に示す比喩として用いました。若い女性のじっと下を向いている視線とぐったりとした姿勢が、鮮やかな様々な色となめらかな筆致と組み合わさり、憂鬱な余韻を喚起しています。
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