赤ちゃんと妖精 by Arthur Rackham - 1907年 赤ちゃんと妖精 by Arthur Rackham - 1907年

赤ちゃんと妖精

『夏の夜の夢』シェークスピア作/ドーヴァー出版 ペン インク 水彩  •
  • Arthur Rackham - 19 September 1867 - 6 September 1939 Arthur Rackham 1907年

「・・・そこで私は彼女に取り替えた子どもをくれと言ったのだ。すると彼女は即座にそれを承知して、妖精を使いに出して私の亭まで子どもを届けてくれたのだ」(オベロン、妖精の王)

アーサー・ラッカム (1867年-1939年) は20世紀のイラスト界を牽引した人物の一人です。ペンやインクを使って愉快で楽しく鮮やかなイラストを子ども向けの妖精物語に描いたことで知られています。1914年にパリのルーブルで開かれた展覧会で一躍有名になり、注目される芸術家となりました。

ラッカムはイギリスのルイシャムで12人兄弟の一人として生まれました。早くから芸術的な才能の片鱗を見せ、ロンドンの美術学校に学びました。当初彼には貧しい芸術家として生きていくほどの確信がなく、18歳で就職して店員となりました。しかしまもなく絵画への情熱を押し殺すことができなくなり、店員の仕事をやめて記者とイラストレーターとして働くようになりました。そうして彼は才能を開花させ、その評判が高まるや数多くの子ども向け図書のイラストの注文を受けるようになりました。『ピーターパン』、『不思議の国のアリス』、そしてグリム兄弟の妖精物語などはその一部です。

今日ご紹介した挿絵は典型的なラッカムの作品です。ラッカムは妖精の王様オベロンの命令で、ご機嫌なふっくらした赤ちゃんを妖精の国に連れてくる妖精を一風変わった不思議な感じに描いています。ラッカムは淡い水彩にペンとインクを使って、軽やかなイメージを作り出しています。カラーイラストを描く際、彼は水彩を洗い落としながら何重にも重ねて透明感を出す手法を使うようになりました。彼独特の美しいイラストは絵本のページに命を吹き込みました。

ラッカムの作品が人気を博するようになったのは、1939年に彼が癌で亡くなった後何年か経ってからでした。彼の素描や絵画は今なお国際的なオークションで大人気で、彼が挿絵を描いた子ども向けの絵本は老若男女問わず今も世界中で愛されています。

- ヘイディ・ウェーバー