画家のイーゼル by Vilhelm Hammershøi - 1910年 - 84 x 69 cm 画家のイーゼル by Vilhelm Hammershøi - 1910年 - 84 x 69 cm

画家のイーゼル

油彩 キャンバス • 84 x 69 cm
  • Vilhelm Hammershøi - May 15, 1864 - February 13, 1916 Vilhelm Hammershøi 1910年

今日ご紹介する作品はハンマースホイを有名にした室内画の一つです。また、このイーゼルも「画家とモチーフ」を題材とした彼の作品に色々な形で登場しますが、画家本人の姿はありません。ハンマースホイは作品に物語性を付与することを嫌いました。

当時もハンマースホイといえば室内画と思われていました。彼は異常なほど執拗にこのテーマに繰り返し立ち帰り、常に新しいものを生み出そうとしました。彼の室内画に描かれているのは空間と、清貧、不気味なほど静かで張り詰めた空気が満ちた室内と、窓から差し込む柔らかな光が優しく照らす壁面です。空気の手触りまで感じられる一方で物質の存在感は薄く、全てが同じ軽さと不確かさで描かれています。限定的な色帯の白やグレイが使われていますが、その表現力たるや目を見張ります。

このような室内画にはしばしば女性が一人描かれていて、背中を向けて立っているものがよくあります。どんなポーズをとっているかに関わらず、女性はいつも冷たく自分自身の殻に閉じこもっているように見えます。時が止まったようで、開け放たれた扉さえ、外の世界とのつながりを作ることはできないように思われます。今回の作品の中では画家は絵を製作中ですが一瞬席をはずしているのでしょう。彼自身が決して登場しないのもハンマースホイの絵の常です。彼は作品に物語性を持たせることを望まなかったのです。

ハンマースホイの室内画が19世紀初頭のデンマーク絵画や17世紀のオランダ絵画の影響を受けているのは確かです。しかし、彼の作品のミステリアスな空気感は他に類を見ないものです。

ハンマースホイの絵をさらにご所望ですか?デイリーアートのこちらの記事「ヴィルヘルム・ハンマースホイの室内画に見る静謐な日常」をご覧ください。