ウアジェトの目の魔除け by Unknown Artist - 紀元前1070–664年頃 - 6.5 cm ウアジェトの目の魔除け by Unknown Artist - 紀元前1070–664年頃 - 6.5 cm

ウアジェトの目の魔除け

ファイアンス、アラゴナイト • 6.5 cm
  • Unknown Artist Unknown Artist 紀元前1070–664年頃

古代エジプトで魔除けとして広く使われたウアジェトの目は、復元されたホルス神の目を表し、ホルス神がハヤブサを従えていたことから、人間とハヤブサの目を組み合わせて描かれました。この魔除けは癒し、再生、保護を象徴し、これを持っていれば、身が守られ、再生の力が宿るとされた幸運のしるしとして、生者だけでなく死者も身に着けていました。

エジプト神話では、ホルスの目は、セト神によって傷つけられたか奪われた後にトート神によって元の状態に回復したと伝えられています。この古代エジプトの魔除けの名ウアジェトは「完全無欠で健康なる者(再び)」を意味し、復元された目を象徴しています。

別の神話によれば、古代エジプトの王オシリスは弟のセトの謀略によってナイル川で溺死し、セトが王位を継承します。遺児となったホルスは復讐を誓い、叔父であるセトに戦いを挑みます。幾多の戦いの後、セトは敗北し、ホルスが王位を奪還しますが、 この戦いでホルスは片目を失い、言い伝えによるとその目は6個のかけらに砕け散りました。トート神は、そのかけらを集めてホルスの目を復元。この時からホルスの目は勝利と、悪に勝る善の象徴となったのです。

この魔除けは、ウアジェトの目に翼と2匹のウラエイ(鎌首をもたげたコブラ)、ライオンという面白い組み合せで作られており、太陽神ラーにまつわる古代エジプトの多くの神話との関連を暗示しています。材料は、ファイアンス、釉薬をかけた陶器、アラゴナイト、天然の炭酸カルシウムの結晶です。

ウアジェトの目を構成する線の比率は2の乗数の逆数(1/2, 1/4, 1/8, 1/16, 1/32, 1/64)になっていて、これらをすべて足すと63/64になります。1/64だけ足りないのは、トート神が復元した分だと言われています。この逆数の並びを続けていくと、その和は1になりますが、これは、砕けた6個のかけらの総和として復元されたホルスの片目の逸話の由来と言われています。

このウアジェトの目は1926年に慈善家エドワード・S・ハークネスが購入し、ニューヨークのメトロポリタン美術館に所蔵されています。ハークネスは、1930年にフィリップス・エクセター・アカデミーに導入したのをきっかけに、ソクラテス問答法をアメリカの高校やカレッジ、大学に広めました。

- クリントン・ピットマン

P.S. ベルリンに所蔵されている、エジプトの有名なネフェルティティの胸像についてはこちら