モントフォールト近くの風景

オランダの画家レオ・ヘステルは当初、室内で光の効果を描写していましたが、1909年夏に屋外での制作を始めます。アムステルダム近郊の川沿いでカンヴァスに向かい、ナイメーヘンやモントフォールト周辺の田園地帯でも宿を見つけて創作活動に励みました。風景描写は、彼にとってより堅固な自己表現の手段となり、自然は、陽光、月光、影、霧といった様々な形で魅力あふれる光の効果を提供してくれたのです。ヘステルはそこに取組むべき主題を見出し、とりわけ樹々と雲の組合せに関心を示しました。 

当初は印象派のスタイルで風景を描いたヘステルは、日没の情景など一日の特定の時刻に現れる印象に惹きつけられていました。彼は1909年に「絶えず姿を変える空」の下のモントフォールト周辺を繰り返し描いています。地平線を低い位置に置いた伝統的な構図の『モントフォールト近くの風景』は、その中でも最も表現力豊かな作品。ヘステルは、明るい色を用いて印象的な筆致で描いています。画家にとって色は「絵画芸術における最も強力な要素」。この作品は、キャリア初期のルミニズム時代の作品の中で最も配色の特徴が際立っている作例でしょう。「青や紫といった色の隣に、濃い黄色やオレンジの純色を置くことで」、情景に力強さを生み出しています。この作品でヘステルが活用しているのは色彩の同時対比理論。必ずしも隣り合ってはいませんが、オレンジと青、黄色と紫といった補色の関係にある色で空が描かれています。空の下の畑で揺らめくのは赤と緑。太く、時として厚塗りの筆致が形作るのは、ダイナミックな大気の流れ。陽光を浴びて黄色とオレンジに縁取られた暗い地平線とのコントラストが際立っています。

1909年から1910年にかけてヘステルは、より繊細かつ「精神性の高い」絵画を目指し、その結果、色彩表現が豊かになります。1911年以降は形を単純化した様式に移行し、キュビズムに傾倒。しかし、色彩には依然として重きが置かれました。ヘステルは、当時のオランダで最も重要な画家の一人でした。

今日の作品は、クレラー・ミュラー美術館の協力で紹介しました。

P.S. クレラー・ミュラー美術館には、現代オランダ芸術の素晴らしいコレクションがあることをご存知ですか？アムステルダム以外で最大のゴッホのコレクションもありますよ！

P.P.S. 私たちは風景画が大好きです。デイリーアートの2023年カレンダー（月めくりと週めくりがあり）にも、それぞれに趣のある作品がたくさん載っています。お見逃しなく！