ホレイス・ピピンは奴隷の孫であり、両親は家政婦と労働者でした。正式な絵画教育は受けていませんでしたが、1930年、43歳の年に最初の油彩画を描いたピピン。第一次世界大戦中、第369黒人歩兵連隊の一員として従軍中に右肩に重傷を負ったことで、絵筆を持った右手を左手で支えながら描くというやり方を強いられました。ピピンは、この手法を注意深く用いることで、自身の戦争体験や、幼少期の記憶に残るアフリカ系アメリカ人の家庭生活、屋外の風景、静物、宗教的テーマ、肖像などを描いたのです。
今日紹介する作品で、限られた色遣いと直感的なデザイン・センスを駆使した見事な腕前を見せるピピン。白い絵具を薄く塗ることで表現された吹雪の中を、馬と幌付き荷車を引きながら進む田舎医者は、患者の診察に向かうところでしょうか。当初、画家は灰色がかった色で雪を描いていましたが、最終的により明るい白に塗り替えています(元々の灰色は画面右下隅の署名の部分に残っています)。ギザギザした小川の流れが前景を占め、寒々とした夜の雰囲気を強調するのは裸の木の枝の繊細なシルエット。遠くまで続く小道には医者の歩みを示す足跡が残されています。この絵は、田舎医者の強靭さと献身を称えているのです。
P.S. ホレイス・ピピンの独創的な作品と、彼が有名になるまでの物語を見てみましょう。