『赤い円』は、ナチスによってバウハウスが閉鎖に追い込まれたことでドイツを離れたワシリー・カンディンスキーの晩年の作品。パリ郊外のヌイイ=シュル=セーヌに住み、画壇がシュルレアリスム一色の時代にあっても、独自の抽象表現を追求し続けたカンディンスキー。彼はシュルレアリスムに追随するのではなく、自身が「内なる必然性」と呼んだものに導かれるように独自の抽象理論を突き詰めていったのです。
『赤い円』の構図の要は、力強さを感じさせる赤い円。繊細な線や弧、生物を思わせる形状が画面全体に動きを生み出しています。パリ時代のカンディンスキーは、バウハウスで培った幾何学的な原理に、自然や微生物から着想を得た柔らかな色彩と有機的形態を融合させました。その結果生まれたダイナミックな構図には、絵画も音楽同様にリズムや色彩、形態を通じて感情を表現できるという画家の信念が投影されています。
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