ピエール・ボナールは、作品の実物を見るとその素晴らしさがわかる画家の一人ですが、実際に描かれた情景を再現してみても同じ印象を受けることはありません。様式化された装飾的な画風と大胆な色遣いが特徴的ですが、この色の使い方こそ、壁に掛けられたボナールの絵に心を奪われる所以かもしれません。
ナビ派の創設メンバーでもあったボナールは、官能的な色彩で日常生活の親密な場面を描くことで知られていました。1900年にナビ派が解散した以後も、モダニズム的な絵画構成への情熱に突き動かされた独自のやり方で、抽象的な色彩とデザインの探求を続けました。