近づく嵐 by Martin Johnson Heade - 1859年 - 71.1 x 111.8 cm 近づく嵐 by Martin Johnson Heade - 1859年 - 71.1 x 111.8 cm

近づく嵐

油彩 キャンバス • 71.1 x 111.8 cm
  • Martin Johnson Heade - August 11, 1819 - September 4, 1904 Martin Johnson Heade 1859年

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「嵐の前の静けさ」という言葉がありますが、アメリカ人画家マーティン・ジョンソン・ヒードによる今日の海辺の風景画は、まさにそれを表現しています。前方の明るさと港や空の暗さ、水面や座っている人物の静けさと乱れる雲という対比の中に、この場面が描き出されています。静かでありながら、緊張感の伝わってくる作品です。真ん中に描かれているのはヨットです。冷たく白い三角形が平たい楕円形の暗闇を二つに分けています。岸辺と岸辺の真ん中であり、嵐と静けさの分かれ目です。

広大な谷や勇壮な滝など、大自然の壮大さを描いたハドソン・リバー派の画家達と異なり、ヒードの風景画は静かで落ち着いています。彼はニューイングランドの湿地帯や干し草の山を好んで描きました。嵐を描いた作品群に描かれている光と空間の相互作用は、彼の主要なテーマでした。今日ご紹介した作品は、1858年ごろに彼がロードアイランドのナラガンセット湾で実際に体験した嵐の時のスケッチに基づいています。そのスケッチは10年後の作品「ナラガンセット湾の嵐」のベースにもなっています。

生涯を通して、ヒードが強く惹かれていたのはハチドリでした。ブラジルに一年間滞在し、青々と生い茂る草木と色鮮やかなハチドリの姿を描いた南方の風景画を40点制作しています。彼はこれらの絵を『ブラジルの至宝』という詳細な本に収めようと計画していましたが、彼の意図は理解されませんでした。しかし彼はハチドリを、蘭の花などと一緒に描き続け、それらは彼独自の世界を作り上げました。(デイリーアートでも一点取り上げています)

晩年のヒードはフロリダに暮らし、木蓮など、南方系の花の静物画に焦点を絞って描きました。1890年に描いた「青いベルベットの上の大きな木蓮」は2004年のアメリカの切手になっています。ヒードは長きにわたって多くを制作した多才な画家でしたが、存命中に大きな成功を収めた訳ではありませんでした。1904年に亡くなってからは長い間その存在が忘れ去られていましたが、1940年代になって見直されるようになり、今その偉業が再評価されています。

- マルティナ