黒いタイツの若い女 by Pierre Bonnard - 1893年 黒いタイツの若い女 by Pierre Bonnard - 1893年

黒いタイツの若い女

油彩 キャンバス •
  • Pierre Bonnard - October 3, 1867 - January 23, 1947 Pierre Bonnard 1893年

これから4週にわたりボナール美術館で開催されている展覧会「ボナール・ヴュイヤール展ーゼイネブとジャンピエール、マリー・リヴィエールの収集品より」から名作をお届けします。この展覧会では、かつてゼイネブとジャン・ピエール、そしてマリー・リヴィエールによって収集され現在はオルセー美術館のものとなっている絵画と素描のコレクションが9月17日まで公開されています。お楽しみください!

ボナールがマルトと出会ったのは彼が26歳の頃でした。マルトは彼の最愛のモデルとなり、後に妻となりました。彼女との出会いと結婚はボナールの人生と作品を大きく変えることとなります。彼は裸婦像を描くようになり、いつしかそれが主要作品のテーマとなり、肉体と空間を最も深く映し出す手段となりました。

今日ご紹介する作品に描かれているマルトはまだ若く、24歳でした。ボナールは彼女と出会ったばかりで、この作品は彼の最初期の裸婦像の一つです。「黒いタイツの若い女」は官能と貞淑の入り混じった作品です。

マルトの体は弱々しく、いまだに十代の少女のようです。ベッドも髪も乱れていることから、起きたばかりであることが推察できます。前方には薄くくすんだ白のシーツが無造作に脱ぎ捨てたパジャマといっしょくたになっています。

ボナールはこの後50年に渡ってマルトの裸体を描き続けることになりますが、彼の絵の中のマルトは少しも歳をとっていかないようです。彼女は意図的なポーズを取ることはありません。ボナールはいつも、彼女の日常のふとした瞬間を捉えました。彼女の動作の一つ一つから、彼は独自のひらめきを得ていました。ボナールは彼女の観察を続け、密かに彼女の表情や動き、そして振る舞いと同化していきました。

ボナールは後にこの親密で小さな一コマを素描の連作として再現することになります。そしてヴェルレーヌの『雙心詩集』やピーター・ナンセンの『マリー』を含む多くの出版物の挿絵となりました。