セーヌ川の穏やかな流れ。この絵は見るたびに私をそこに引きつけ、偉大な印象派画家にして画家達の支援者でもあったカイユボットへの想いがますます強まるのです。この絵の色彩は非常に鮮やかで、筆づかいによって影や動きがわかります。そして水面のさざめきの描写を見るとふと立ち止まって物思いに耽りたくなります。その空想の中で私は川に入ってボートによじ登り、西へ向かって11キロ、カイユボットがルノアールの『船遊びのパーティ』でモデルを果たしたメゾン・フルネーズへと向かうのです。
カイユボットはこの名作を第二回印象画展へのデビュー8年後に制作しました。彼はアルジャントゥイユ近くのセーヌ川のプティ・ジャンヌヴィリに一件の家を購入し、熱心な画家、園芸家、ボートやヨットのデザイナーとして過ごしました。私は彼がこの一つの絵にさまざまな情熱を注ぎ込んだと解釈したいのです。
前方には川岸に沿って生える草木を写実的に描いています。中洲には小さなヨット(おそらく彼自身がデザインして作らせたものでしょう)が係留されていて流れ行く川面に姿を写しています。この反射が生き生きしているので私はこの絵の外の川のさざめきまでをも感じることができるのです。この絵の中の背景は(工場も含めて)素晴らしい印象画の風景画でそれだけでも逸品です。
この絵は最近アメリカのミズーリ州カンザスにあるネルソン・アトキンス美術館にブロッホ夫妻から寄贈された29点の印象派・後期印象派作品のうちの一つです。会話と空想を呼び覚まし、芸術の力が地域の魂を触れ合わせる場であるという、この美術館の使命を体現する画期的な贈り物として美術館の所蔵品に加えられました。
- ブラッド・アレン
デイリーアートのこちらの記事「都市を愛したグスタフ・カイユボット」も読んでみてください。