Eva Frankfurther
1930年、ベルリンのユダヤ人家庭に生まれたエヴァ・フランクフルトは、1939年に難民として渡英。戦後、セントマーチンズ美術学校（1946-51年）で学び、フランク・アウアーバッハやレオン・コゾフらと同窓生となります。卒業後は、すでにアートシーンに対して幻滅していたのですが、自立して生きていくことを決意し、夜はピカデリーのライオンズ・コーナー・ハウスでレジ打ちの手伝いや皿洗いをして働き、日中に絵を描いていました。出稼ぎ労働者を含む多くの人々が行き交うリヨンは、彼女に「人間という無限の素材」を提供し、その後5年間、彼女の作品の土台となるのに十分なものでした。フランクフルトの絵は、新しい移民たちの先駆的な肖像画として、新しい多文化国家のイギリスの始まりを記録するドキュメンタリーとしての機能も持ち合わせています。西インド諸島、アイルランド、キプロス、パキスタンの移民、福祉国家が見過ごしているイギリス人。これらの人々は、私が共に暮らし、親友となった人々である」と彼女は書いています。
『West Indian Waitresses』では、フランクフルトは、女性の顔と姿勢に焦点を当て、緩い筆致と乾いた絵の具を控えめに使い、共感と尊厳をもって対象をとらえています。彼女たちは微笑んだり、鑑賞者と関わったりはしませんが、バラ色の背景は、作家の女性に対する本能的な共感を示す「女性的」な色調の典型といえるでしょう。その構図は、二人の女性が互いに映し出されるように注意深く配置されており、二人の間に仕事上だけでなく個人的にも密接な関係があることを暗示しています。リヨン特有のクロスオーバーのオーバーオールにヘッドドレス、そしてファッショナブルな髪型をした彼女たちは、1950年代にしっかりと位置づけることができましょう。リヨンはもともと「Nippy(すばしっこい」なウェイトレスで有名だったのですが、フランクフルトは、カウンター・スタッフがオープン・ベンマリーから決まった料理を取り分けるセルフサービス式のカフェテリアを導入したことも記録しています。女性の体の垂直線に対する腕の水平線は、一連の強い対角線によって相殺された静的な枠組みを形成し、その静止したジェスチャーは、レストランの忙しく騒がしい現実の中での貴重で静かなひと時を暗示しています。
2017年3月 サラ・マクドゥーガル
本作品は展覧会『Refugees: The Lives of Others - Selected Works by Eva Frankfurther, Ben Uri Gallery and Museum, 2017年3月29日～6月18日』に含まれます。