ヴィルヌーヴのミシアとヴァロットン

この絵には、有名人の集団がいます。前景の女性はミシア・ナタンソン、ナビ派の永遠のミューズであり、19世紀の最後、ヴュイヤールの報われない心酔の対象でもありました。後ろの男性は画家のフェリックス・ヴァロットン（私は彼の作品が大好きです！）で、彼もまたミシアと、熱のこもった戯れの関係を持っていました。ヴァロットンはおそらく、ヴュイヤールの代理人として、もしくはミシアの分離した恋慕の好意的なライバルとして、ここに登場しています。いずれの場合でも、同時に起こる2人の主役の近接と解放は、彼らの関係の確かな曖昧さを示唆します。

3人目の男性、というより3人目の男性の断片というべきかもしれませんが、彼はミシアの夫のタデ（ヴュイヤールがミシアを愛していたと知れば、彼が彼女の夫をカットするのは当然でしょう）で、影響力のあった文学誌「ラ・ルヴュ・ブランシュ」の共同創設者でした。当時のパリの最先端の美術・文学サークルのまさに中心点であったミシアに魅了されたヴュイヤールは、この室内空間に、そのもっとも痛切で本質的な表現、画家の内なる感情の叙情的な昇華と、彼の欲望が満たされた幻想との両方を表す、色彩と質感の多声音楽を作り出しています。

1893年にタデはミシアと結婚します。優れたピアニストで因習打破主義者のミシアはたちまち、「ラ・ルヴュ・ブランシュ」を中心とした世才ある知識層の、ミューズで最愛の人となりました。ミシアは才能のあるピアニストで、スターでした。彼女の独特なスタイル、人をうっとりさせる色香、さらに絶えず人々に囲まれたい彼女の身体的欲求ともいうべきものが結合し、彼女を、抗えないほど魅力的な人にしました。

ヴュイヤールにとって、ナタンソン夫妻との深まる関係は、まるで改宗のようで、人生を変えるような、全てを費やすようなものでした。その10年のうちの半ばまで、彼は夫妻にほぼ毎日会っていました。夫妻は彼の作品をたくさん購入し、制限なく友人たちに彼を勧めていました。夫妻は彼に、最先端の美術とアイディアへの秘密の入り口を与え、人生のやり方――経験と文化――を実演してみせ、未熟な画家はそれに惹きつけられたのでした。

ナビ派は、今では幅広いポスト印象派のグループのひとつとされている画家たちです。彼らについてもっと学びたい方は、DailyArtのポスト印象派基礎コースをチェックしてくださいね。 : )

P.S. ヴュイヤールは、女性を描く特別な才能を持っていました。こちらから、この素晴らしい画家による記念すべき肖像画の女性たちをご覧になれます。