アーティストは、自然界の不可思議を芸術と捉えることがあります。今日はカザフスタンの自然をタペストリーで表現した作品を覗いてみましょう。
そもそもカザフスタンのタペストリーは、糸を複雑に絡み合わせて作られ、色の取り合わせ、ウールの手触り、編み込む技術、そしてもちろん出来栄えの美しさが重要とされています。カザフスタンの著名なアーティスト、アリベイ・バパノフとサウル・バパノヴァは、広大なカザフスタンの草原とそこに栄える神秘に満ちた生命を、自国の伝統的なタペストリーの技術に取り入れ芸術へと昇華させました。バパノフとバパノヴァは山々を天国と地上の間にある重要なものと捉え、本作"Space"でその雄大さを表現しています。空に映る山並を通し、地上とSpace(宇宙空間=天国)との繋がり、羊飼いと羊の群れを線上に配置することで過去から未来への時間の流れ、更にはカザフスタンで信仰されているテングリ信仰の要素も散りばめられているとも言われています。色とりどりの糸を要所では詳細に、時には大胆に濃淡をつけることで、様々な要素を1枚のタペストリーに収めることに成功しています。
協賛A.Kasteyev State Museum of Arts of the Republic of Kazakhstan.
P.S. ところで、このヴィヴィッドなタペストリーを見ていると、20世紀のスイス人画家パウル・クレーを思い出しませんか?