キス

ハッピー・バレンタインデー！素晴らしき愛の日を記念して、今日は『キス』をお届けします！キスと言えばクリムトの『接吻』を期待されたかもしれませんが、それは去年採り上げたので、今年はイタリア・ロマン主義のアイコン的作品を紹介します。

描かれているのは、抱き合って口づけを交わす中世のカップル。西洋絵画史の中でもとりわけ情熱的なキスの描写です。体を反らせる女性。男性は左脚を曲げて女性を支えていますが、そばにある階段に足をかけて、いつでも立ち去れる構えのようでもあります。画面中央のカップルの顔はわからず、画家アイエツはキスという行為そのものを構図の中心に据えようとしています。

この絵が表現しているのは、情熱的なキスだけではありません。より深いレベルでは、ロマン主義、民族主義、”リソルジメント”（イタリア統一運動）－イタリア半島の複数の王国を、イタリア王国という一つの国家に統一することを目的とした運動ーの愛国的理想を象徴するものでした。この解釈は、絵に描き込まれている幾つかの図像学的要素によって裏付けられています。 

階段に乗せた男性の足と、男性を強く抱き締める女性の手が示唆しているのは、２人の差し迫った別れ。そこには、男がやむなく立ち去らなければならない事情とともに、愛国者であることの危険が表現されています。他には、マントに隠された短剣は、ハプスブルクの侵略者に対抗すべく間近に迫った反乱を、絵の制作年（1859年）は、第二次イタリア独立戦争の年をそれぞれ表しています。

愛と政治。ハッピー・バレンタインデー。今日は愛する人へのキスをお忘れなく！

P.S. アイエツはエロティックなドローイングでも知られていたことをご存知ですか？こちらをご覧ください。

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