夕暮れ時の満ち潮

フェリックス・バロットンは才能あふれるスイスの画家、版画家。非常に多作でもありました。1890年代は、ナビ派として知られた画家グループで活動。この若くて前衛的なグループは、ゴーギャンや日本の浮世絵の影響を受けた非常に装飾的な様式で新たな道を切り開きました。近代木版画の発展に重要な役割を果たしたバロットン。感情を抑えた写実的なスタイルで肖像画、裸体画、静物画などを制作した彼は、美しい風景画も描きました。今日の作品はその中の１点です。

バロットンは風景を描く際には、主に戸外でのスケッチと、コダックのカメラで撮った写真を活用しましたが、想像上の要素を加えることもありました。『夕暮れ時の満ち潮』は、情景に夢のような雰囲気を添える青い波と明るい色彩の調和が特徴的。彼はこう記しています。「私は自然のそのままの姿に固執する姿勢から完全に解放された絵を夢見ている。私の内面から湧き上がる感情だけを拠りどころとし、時間や光の具合の厳密さという迷信からは距離を置き、2,3の感情を揺さぶる線と、選ばれた1つか2つの細部で構成される。そんな風景画だ」

P.S. フェリックス・バロットンの美しいモノクロの版画をご覧ください。

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