今日は南アジア、有名なムガル帝国へ行きましょう。この絵に描かれているのは、1633年6月に起きたよく知られた出来事。象の試合中にスダカーという象が暴れ出し、父である皇帝シャー・ジャハーンが高みの見物を決め込む中、未来の皇帝アウラングゼーブが並外れた勇気を示して象に立ち向かったのです。このエピソードは、アウラングゼーブの青年期における最も有名な出来事の一つとなり、ムガル芸術作品でもしばしば採り上げられています。
躍動感あふれる一瞬を捉えた構図。アウラングゼーブの馬は後ろ脚立ちのドラマチックな姿勢を取り、王子は鞍の上で体をひねり、向かってくる象に槍を突き出そうとしています。この題材を描いた既知の作品の中でもこの絵は、象の上に書かれたナスタアリーク体(ペルシア語やアラビア語で用いられる主要な書体の一つ)の長い銘文が特徴的。そこには、この出来事の詳細が記されています。
ムガル帝国は、1526年から19世紀半ばまでインド亜大陸の大半を支配した、南アジアで最も強大かつ影響力を持っていた国の一つ。軍事力と文化的功績で知られるこの帝国は、建築、文学、そして名高い伝統を誇るムガル細密画をはじめとする絵画などで目覚ましい発展を遂げました。
P.S. 残念ながら、壮麗なムガル伝統芸術の衰退が始まったのは、アウラングゼーブの保守的な統治時代のことでした。