光と色彩 by Joseph Mallord William Turner - 1843年 - 787 x 787 cm 光と色彩 by Joseph Mallord William Turner - 1843年 - 787 x 787 cm

光と色彩

油彩 キャンバス • 787 x 787 cm
  • Joseph Mallord William Turner - 1775 - December 19, 1851 Joseph Mallord William Turner 1843年

J.M.W. ターナー (1775年から1851年) は19世紀で最も影響力の大きかった画家かもしれません。ロンドンで生まれた彼は若い時からその才能をもって知られていました。初期の作品は当時の形式に忠実なものだったようです。風景に関心を持っていたターナーの初期の絵は、写真のような色彩体系に従っていて、鮮やかではあるものの当時としは一般的な描き方でした。この頃の成功は、絵の名人という評価を彼にもたらしました。ターナーが鮮烈な色彩と陰影法を試みて有名になるのはかなり後になってからです。今日ご紹介した『光と色彩』はその典型で、ターナーの急進的な試みがよく現れています。全ての色は特定の光と影の個性的な組み合わせによってできているというゲーテの色彩理論に基づき、ターナーは天災を、オレンジ色の狂乱に取り囲まれる大きな嵐の渦とうねりとして描きました。今でこそ名作と言われていますが、これら後期の作品群は当時冷たくあしらわれました。ターナーの偉業が後に印象派と呼ばれる人々の脚光を浴びるようになるには、もう20年待たねばなりませんでした。とりわけモネはターナーの水の流れを捉える観念的な色遣いに大きな影響を受けています。

実は今日ご紹介した作品と対になっている作品『光と影』は1994年にドイツのフランクフルトにあるシルン美術館から盗まれたものです。この絵が盗賊の隠し場所から発見されて取り戻されるまでには8年を要しましたが、全く無傷であったことは幸いでした。今ではターナーは印象派の先駆けとされ、光と色を巧みに用いて生み出された透明感のある作品の美しさは崇敬を集めています。

彼の言葉です。「恐れがなくなった時にこそ、創造が始まるのだ」

- アレクサンダー・スミス