エドガー・ドガは、サーカスの曲芸師ミス・ララのスリル満点の演技中の姿をとらえました。歯をわずかに食いしばりながら、サーカスの屋根へゆっくりと持ち上げられているところです。めいっぱい斜めに広げた腕の動きから、彼女の強靭さと集中力が伝わってきます。そしてドガの色使いによって一層ドラマティックに感じます。電撃のようなブルーの背景と、黒髪で強調されたミス・ララの茶色い肌色とのコントラストがとても印象的です。
ミス・ララは、迫力がありながらも機敏な曲芸をフェルナンド・サーカスで披露していました。1875年パリ北部で始まったそのサーカスは芸術家にも人気の場所でした。ドガに加えて、近所に住んでいたピエール=オーギュスト・ルノワール、アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレック、ジョルジュ・スーラらもそれぞれサーカスに赴き、作品を残しています。ドガはとりわけミス・ララの際立った演技に心を惹かれ、1879年1月のとある晩に大成功を収めた彼女の姿をスケッチしました。現在ロンドンのナショナルギャラリーにはミス・ララを描いたドガの最も有名な油彩画があり、私たちのアーカイブにもある作品ですが、そのための習作のひとつがこの重要なパステル画です。
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