富士と笛吹童図 by Katsushika Hokusai - 1839年 - 36.2 x 51.3 cm 富士と笛吹童図 by Katsushika Hokusai - 1839年 - 36.2 x 51.3 cm

富士と笛吹童図

絹本着色 • 36.2 x 51.3 cm
  • Katsushika Hokusai - 1760 - May 10, 1849 Katsushika Hokusai 1839年

富士山は、日本の象徴として最も広く知られているものでしょう。この山の名称には、例えば”不二”が唯一無二を表すように、異なる漢字を当てることで様々な含意があります。毎年冠雪するその頂にある火口の灼熱の深奥には、日本最高峰の山が持つ緊迫した力が潜んでいます。富士は宗教的巡礼の対象である霊峰とされ、古来から山頂には不老不死の薬があると言い伝えられてきました。この絵の富士は、水かさを増した川をまたいで伸びる柳の曲がった幹が作る枠の内に、その姿が収められています。一人の少年が幹に腰かけて、山を眺めながら笛を吹いています。北斎は生涯にわたって数多くの富士を描いてきましたが、この穏やかで魅力的な雄姿はその内の1つです。齢八十に近づいた画家は、不滅の霊峰に取り憑かれた童子を描くことで、その探求に生涯をかけた自らの姿を投影しているのです。

北斎は熟練の腕を持った多作の画家でしたが、市井の人々に特別の親近感を抱き、自筆画や版画、版本の挿絵に描いてきました。この作品では、ほとんど輪郭がわからないぐらい薄い色遣いで、よく知られた富士の姿を表現しています。

今日の掛軸の1点は、フリーア美術館の協力でご紹介しました。

P.S. 素敵な風景ですね。安定剤に頼るより、ずっと落ち着きます。北斎が描いた富士、こちらからもどうぞ。