羊

イヴァン・アイヴァゾフスキーは、海景画と戦争画の画家として知られていますが、風景や日常の暮しにも関心を向けていました。羊の群れは、彼が好んで描いた題材の一つ。画家は、かつて羊の群れが暴風にあおられて海まで追い込まれ、シェイク・ママイの画家の邸宅の敷地内で全滅した事件を、目の当たりにしています。

『羊』は、観る者をのどかで穏やかな気持ちにさせてくれます。峡谷には、地平線まで果てしなく続く羊の群れ。枝を広げた樹の影に見えるのは牧夫の姿。アイヴァゾフスキーは、ステップの風景を描いた最初の画家の一人です。

画面の雰囲気を創り出しているのは、沈む夕陽と、日中の陽光で温められた大地。アイヴァゾフスキーの卓越した画力は、夕暮れの太陽の描写によく表れています。まばゆいばかりの太陽の外縁は輪郭が曖昧で、もやのような光に覆われ、境界のはっきりしない、輝く染みのように見えます。

今日の作品は、オムスク地方美術館の協力で紹介しました。

P.S. イヴァン・アイヴァゾフスキーは海景画家の巨匠。彼が描いた海上の日没と日の出、嵐、凪、難破船、海戦、そして世界規模の大洪水！はこちらをご覧ください。