この絵はとっても小さいですが、テーマは壮大です。表現されているのは、ローマの詩人オウィディウスが『変身物語』で語った、非常に有名な神話の物語。それは神々の争いと愛の力や危険についての、何の変哲もない物語です。自分をからかったアポロンへ仕返しすべく、キューピッドは黄金の恋の矢でアポロンを射ち、ダフネへの激しい欲望を抱かせます。そしてダフネにも矢を放ち、それによって彼女はアポロンを拒絶するのです。アポロンの抱擁から逃げ出すダフネを助けるため、彼女の父である川の神ペーネイオスは、彼女を月桂樹の木へ変身させました。
この絵はかつて、装飾的な家具(カッソーネというイタリアの婚礼用の長持)の一部だと考えられていましたが、おそらくは独立した絵画として制作されたものです。わずかな絵具で描かれた遠くの霞がかった山々にくわえ、丘の中腹に散らばる花、川面に映る木などの精緻なディティールは、この絵が間近で鑑賞されるために描かれたことを示唆します。美しいと思いませんか?
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P.S. 幸いなことに、神話にまつわるもの全てが暴力を含んでいるわけではありません。世界中の美術に描かれた5つの神話のラブストーリーをご覧ください。