夜の饗宴 by Paul Klee - 1921年 - 36,9 x 49,8 cm 夜の饗宴 by Paul Klee - 1921年 - 36,9 x 49,8 cm

夜の饗宴

油彩 紙、油彩画を施した段ボールと板に嵌め込み • 36,9 x 49,8 cm
  • Paul Klee - December 18, 1879 - June 29, 1940 Paul Klee 1921年

パウル・クレーに会ってみたかった!本当にそう思います。

1879年12月に生まれたクレーは最初は音楽を志していました。しかし10代の頃に画家の道を選び、1898年にミュンヘン美術院で学び始めます。彼は素描の才能がありましたが、色彩は難しいので油絵を学ぶことはないだろうと語っています。だとすれば我々はこの色彩豊かで美しい『夜の饗宴』を一体どう捉えたら良いのでしょう!?

パウル・クレーの作品群は彼が形式的な分類を拒んでいたためその種類が多岐にわたります。しかし本作品は表現主義に根ざしていると言えます。ここで描かれているのは夜の建物、木、草むら、空、そして星です。建物は子どもの絵のように素朴に描かれています。家、そして納屋のようなもの、そしておそらくは教会であろう建物は簡略化された線と形で描かれていて、背景は前の地面と、真ん中を水平に横切る線でつながっています。私にはこの境界を分ける線は前の部分と背景、空と大地、広がりと密集を繋いではいますが、同時に分ける役割も果たしているように思えます。そして小さな暖かい場所を、はるかな天国の下に見ているような気がするのです。この温かみはもちろんクレーの色使いから感じられるものですが、彼はそれを習得できないと言っています!

赤と緑という反対色が調和を生み出しています。木には月明かりにが当たっているみたいに白い点が付されています。中心部の赤い屋根の建物はその横と下の赤みでバランスを取っていますが、一方地面と山でしょうか、水平線上の物体は緑で描かれていて引き立て役を果たしています。この絵にはどこか夢見心地な感じがあります。異なる可能性が互いに響き合っているかのようですが、それは無関係なものです。これは虚構なのですから。この絵を見ていると眠りに落ちて、毎日物事が潜在意識のかけらに絡み合っている、そんな私の世界の中に入っていけそうな気がします。

バウハウスの教授だった頃(1921年から1931年)、クレーは彼独自の色彩理論を構築しました。彼は面白い色相環を使い、それを球体に変換して色彩と明度と彩度を表しました。彼はまた色彩には重さがあるという考えも持っていました。クレーにとって赤は非常に重たい色でした。1914年彼は日記で「色と私は一体です」と書いていますが、この『夜の饗宴』を見ると納得です。見ているものを虜にするこの絵の力は折り紙付です。そのためクレーが、色彩の表現とその情緒的な力を手なづけることは到底不可能だと信じていたのが一層不可解なのです。

- サラ記

デイリーアートのこちらの記事「クレーの秋」もぜひご覧ください。