これは、かの有名なエドヴァルド・ムンクの木版画の作品です。絵の中の肩をがっくりと落としている人物はムンクの友人で作家のヤッペ・ヤコブ・ニルセンです。ニルセンは、この絵が描かれた夏にオーダ・クローグという人妻と不倫関係になったことから、その夫であり画家のクリスチャン・クローグと激しい嫉妬の渦巻く三角関係に陥りました。
ムンクは本作を制作するにあたり、ディテール部分まで表現ができる絵画ではなく木版画を選びました。そのため、モチーフは可能な限りシンプルに、人物の表情を表すラインも必要最低限にする必要がありました。本作は2枚の木版から作られ、構図は木目を活かしたものになっています。1枚目の木版は木目が横になるように、2枚目は木目が縦になるようにあえて使用されています。
ムンクは、1902年にベルリンで開催された展覧会で自分がこだわりを持って仕上げたこの作品を失くしてしまったと勘違いし、もう一度同じ作品を制作しました。しかし、二作品目は構図は同じですが、左右が反転しています。
P.S. ところで、ノルウェー人のムンクは、スカンジナビア地方で夏の間に見られる白夜を描くことをとても好み、多くの作品を残していることをご存知ですか?彼の描いた夏の夜の風景に興味がある方はこちら。