今日の作品は、フランクフルトのシュテーデル美術館の協力で紹介しています。休館していなければ、同館では『アンパッサン 印象派の彫刻』展が開催されるはずでした。代わりに、デイリーアートでこの素晴らしい作品をご覧ください。
母と幼子が寄り添って眠っています。至近から捉えられた姿にも関わらず、ほうきで掃いたような不鮮明な描き方は、観る者の視線を避けているようです。二人の輪郭ははっきりせず、暗闇に浮かんでいるような印象です。グレイと茶の単調な色合いと靄がかかったような絵画手法は、このフランスの象徴主義の画家の特徴ですが、この作品でも、母と子を外界から守るようにベールで覆い、二人の親密さを表現しています。母子像は、ウジェーヌ・カリエールが何度も取り組んだ主題です。
P.S. ビクトリア朝時代の象徴主義についてはこちらをご覧ください。