Augustus Leopold Egg
そろそろ旅行にも行きたいですね。
身なりのよい2人の女性が、狭い１等客車で向かい合って座っています。鏡像のように描かれている2人は姉妹かもしれません。
グレイの、ゆったりとしたシルクの旅行用ドレス、膝の上に置いた帽子。二人とも同じ装いで、客車の座席に座る姿が左右対称に描かれています。窓は３つに分かれ、外の景色を三連祭壇画のように縁取っています。車窓からはコート・ダジュールのマントンの海岸線が見えますが、二人とも興味がないようです。窓のブラインドの房が揺れていることで、列車が動いているのがわかります。二人が座っているコンパートメントも左右対称です。
この絵のタイトル『旅の道連れ』には、ある種の皮肉が込められているようです。二人は同じ空間を共有し、装いも同じ旅の道連れですが、相互の交流は見られません。遠くの景色にも、そばにいる連れにも、自分以外のことには無関心。上流階級の贅沢と近代的な移動手段の登場が相まって、二人を自分以外のすべてのものから遠ざけているのです。快適な旅をしているにも関わらず、せっかくの旅の経験をすっかり放棄してしまっています。