黒海の嵐 by Ivan Aivazovsky - 1844年 - 134 х 72 cm 黒海の嵐 by Ivan Aivazovsky - 1844年 - 134 х 72 cm

黒海の嵐

油彩/カンヴァス • 134 х 72 cm
  • Ivan Aivazovsky - 29 July 1817 - 2 May 1900 Ivan Aivazovsky 1844年

アイヴァゾフスキー自身の言葉によると、彼が制作した6,000点の作品の内、4,000点は嵐が主題。荒れ狂う波の威力と、人を魅了するその美しさを表現しようとしました。

数多くの海景画を遺した彼が描いたのは、様々な姿を見せる海。作品の根幹をなすのは、驚くべき記憶力と豊かな想像力です。人体のデッサンはほとんど描かず、もっぱら自身のアトリエで制作に取り組みました。

『黒海の嵐』には新奇性も見られますが、ロマン主義特有の特徴も残っています。初期の画風とは異なり、寒色系のグレイがかった緑色のトーンが微妙に変化していく部分には、抑制された色遣いが見て取れます。薄塗りの絵具の配色のリズム、ダイナミックな筆さばきを感じさせる対象の形状、質感を表現する仕上げの複雑な美しさ、そして光の効果による力強さなど随所に、卓越した技術と芸術性が現れています。 

この作品には、画家が自身の目で見て、感じた様々なことが一体となって描かれています。とりわけ彼の脳裏によみがえったのは、1844年にビスケー湾で体験した嵐。すさまじい嵐によって船は浸水。ヨーロッパやサンクトペテルブルクの新聞は、当時よく知られていた若いロシアの画家の死を報じました。後年、アイヴァゾフスキーはこう回想しています。「恐怖の中でも、私の知覚は麻痺することなく、あの嵐の情景は、見事な活人画のように私の記憶に刻まれています。」

今日の作品は、オムスク地方美術館の協力で紹介しました。

P.S. イヴァン・アイヴァゾフスキーが描く「海上の生活」についてもっと知りたい方は、こちらをどうぞ!