椿と貴婦人 by Aubrey Beardsley - 1894年 - 27.9 × 18.1 cm 椿と貴婦人 by Aubrey Beardsley - 1894年 - 27.9 × 18.1 cm

椿と貴婦人

版画 • 27.9 × 18.1 cm
  • Aubrey Beardsley - 21 August 1872 - 16 March 1898 Aubrey Beardsley 1894年

このビアズリーの作品は、アレクサンドル・デュマ・フィスの1852年の小説からインスピレーションを得て制作されました。それは、恋人のためにすべてを捨てた高級娼婦をめぐる感動的な物語。元々は化粧台の前に立つ女性を描いたシリーズの内の1点で、『化粧する女』と呼ばれていましたが、ビアズリーが後に、デュマの小説に登場するマドレーヌ・ゴーティエの肖像に仕立てたのではないかと考えられています。1890年のビアズリーの初期のドローイングに若干似ていることも、この説の根拠になっています。マドレーヌと同じように結核を患い、後にその病で亡くなることになるビアズリーは、小説の中の女性に共感を覚えていたのかもしれません。

この作品には鏡に自分の姿を映す女性が描かれていますが、ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティやエドガー・ドガも同様の設定の作品を遺しています。ビアズリーのドローイングは非常にスタイリッシュで、大きな黒いスペースが画面の下半分を占め、ほとんど人物と一体になっているようです。腕は隠れていて、顔はフリルのついた派手な襟の上に見えます。大きく平面的な色彩とシルエットの効果が特徴的なこの作品には、ビアズリーが好きだった日本の浮世絵の強い影響が見て取れます。最も細かく描かれているのは、化粧台の上の品々と花模様の壁紙。暗い影が落ちる女性の顔には悲しげな表情が浮かび、病あるいは疲労をほのめかしています。画家は女性をリアルに描くことよりも、模様とデザインに集中しています。

私はひと目見た瞬間から、この版画が好きになりました。大胆でありながら装飾的でもありますよね!

P.S. ラファエル前派、日本の浮世絵、ヴィクトリア朝のエロティシズム。オーブリー・ビアズリーのユニークなスタイルに影響を与えた着想源についてはこちら