1471年の今日、偉大なるルネサンスの画家アルブレヒト・デューラーが生まれました。
当時はこの絵のように、物柔らかな表情を間近に見える位置で描く、素直なポートレートがヴェネツィアの主流となっていました。デューラーが2度目のイタリア訪問をした際に、他の多くの上流階級の人々の肖像画とともに、この絵も描かれました。まさにこの時期、デューラーは当時ドイツ国外では無名でしたが、そこで出会った巨匠ジョヴァンニ・ベッリーニに魅了され、懇意になったようです。そして、今回ご紹介した絵画こそがヴェネツィアで彼が初めて描いた肖像画とされています。1507年1月、北部へと戻らなくてはいけなかった彼は、友人であるヴィリバルト・ピルクハイマーに宛てて次のような有名な嘆きの手紙を送っています。「“O wy wirt mich noch der sunnen friren. Hy pin jch ein her, doheim ein schmarotzer.”(あぁ、なぜこんなにも太陽を浴びているのにまた凍えなくてはいけないのだろう!ここでは貴族のような私も、故郷では単なる居候さ)」と。なんとも可哀想なデューラーですね。
この肖像画は未完成作品で、とりわけ胸の上の黒いリボンのように、いくつもの部分が他の箇所に比べて描写が弱くなっているのが見受けられます。