地獄の門~神曲・地獄篇第三歌より by Joseph Anton Koch - 1803年 地獄の門~神曲・地獄篇第三歌より by Joseph Anton Koch - 1803年

地獄の門~神曲・地獄篇第三歌より

鉛筆、ペン(茶) •
  • Joseph Anton Koch - 27 July 1768 - 12 January 1839 Joseph Anton Koch 1803年

 今日のデイリーアートは、本作の作者であるヨーゼフ・アントン・コッホ(1768-1839)の作品を多く所蔵していることで有名なウィーン美術アカデミーのグラフィック・コレクションからの出展です。

 本アカデミーでは、2019年10月4日から2020年1月12日までの間、地獄をテーマにした絵画のエキシビション「Drawings of Hell」を実施しており、ダンテ・アリギエーリ(1265-1321)の神曲の地獄篇を絵に起こしたものに焦点が当てられています。コッホは世界の中でも神曲に関して特に知識を豊富に持ち合わせたエキスパートのひとりで、その多くを暗唱できたと言われています。エキシビションでは20の作品が展示されており、修正の利かないペンを大胆に用いた本作も鑑賞することができます。

 この作品でコッホは、ダンテとウェルギリウス(英名:バージル)の地獄の門でのシーンを描いています。門には「LASCIATE / OGNI SPERANZA / VOI CH'ENTRATE (この門をくぐる者は、一切の希望を捨てよ。)」と書かれています。また、門の向こう側には大きな旗を振り逃亡している3人の罪人と、さらにその奥には地獄の川の渡し守カローンが見えます。カローンは古代の人々に、地下世界を流れるアケローン川で死者を小舟に乗せ、幸福の島まで渡しているとされていました。ですが、本作内の罪人たちの哀れな行動は、地獄で待ち受ける絶望を物語っています。

P.S. 多くの画家が神曲を絵画にしていますが、コッホ以外にもウィリアム・アドルフ・ブグローなどが有名です。暗くて絶望的でいかにも地獄・・・ぜひチェックしてみてください。