ナルキッソス by ミケランジェロ・メリージ カラヴァッジョ - 1600年 - 113.3 × 94 cm ナルキッソス by ミケランジェロ・メリージ カラヴァッジョ - 1600年 - 113.3 × 94 cm

ナルキッソス

油絵 • 113.3 × 94 cm
  • ミケランジェロ・メリージ カラヴァッジョ - 1571年9月29日 - 1610年6月(?)18日 ミケランジェロ・メリージ カラヴァッジョ 1600年

今週末もウィーン美術史博物館、来年1月20日まで開催中の「カラヴァッジョ&ベルニーニ」からです。お楽しみください^^

この絵は今でこそカラヴァッジョの作品とされているが当初は信憑性が薄く、ここで論じるに値する。

ラテン詩人オウィディウスの『変身物語』にも含まれているナルキッソスの神話は若く美しく、しかし好意は冷酷に拒絶する無情な狩人の物語である。罰として神ネメシスは片思いの苦しみを課せる。そして彼はある春の日、泉の水面に映った自分の姿に一目惚れし離れる事が出来ず溺れる。カラヴァッジョの独創的な絵に対してナルキッソスをモチーフにした作品は大概その泉や周囲の木々も描かれてる。

しかし暗闇に浮かび上がるナルキッソスの姿は彼の終焉を連想させ、カラヴァッジョは自身に見とれ愚かにもその姿に近づこうとする瞬間を表している。この洗練された描写は主人公の想いを見る者にも感じさせる。照明が当たっているかのような膝を中心にナルキッソスと彼の反映した姿とで円が現れ、視線を引きつける。

ナルキッソスという世俗的なモチーフは近世人気を帯びてきた異教文化や文学を含む新プラトン主義に属する。この作品自体ギリシャの格言 γνῶθι σαυτόν (汝自身を知れ)を仄めかし、自身を知る事で神の存在に近づけることを示しているのかもしれない。もしくは表面的な美から生まれる自惚れに対するカラヴァッジョの警告であり、見る者の人としての成長を促しているのかもしれない。

P.S. ナルキッソスはいつでも芸術家を魅了しています。草間彌生は1966年に「ナルシスの庭」を制作、その素晴らしい作品はこちらから♥︎