1885年から1889年ごろにかけて、サージェントは夏の終わりから初秋までをイギリスの片田舎で過ごしました。彼はパリ出身、その卓越した才能は高く評価され、肖像画や風俗画はサロンや小さな展示会でも注目されていました。
サージェントは1887年の7月以来3年続けてヘンリー・レガッタ(ボートレース)が行われていたテムズ・バレーの川辺で夏を過ごし、ボートに設えた即席のアトリエで絵を描きました。1873年ごろフランスのヴェタイユでボートにアトリエを作って絵を描いていたモネのやり方を真似たのでしょう。この頃彼のモネ崇拝はピークに達していて、ジヴェルニーのモネを訪ね絵を2枚購入したこともありました。
この作品には日付がなく、誰がモデルなのかも分かっていません。若い女性は横を向いていて、小川のほとりで足を組んで本を読んでいます。服装は判然としませんが、実際に着ていた衣類そのものではなくより美しい衣装として描かれているようです。背景には地平線は描かれていません。水面の輝きを背景とするためにあえて大きく傾けた視点によって、より一層自然に包み込まれている雰囲気が出ています。
P.S. この数年前、サージェントは風光明媚なイタリアのカプリ島でも何度か夏を過ごしています。そこでは美しいモデル、ロジーナ・フェレーロとのロマンスも・・・。彼女はサージェントの恋人となり、彼の創作のインスピレーション源ともなりました。2人についての詳細と美しい作品はこちらをご覧ください。