今日はクラクフ国立美術館の所蔵作品から日本の版画をご紹介します。美術展『女ー美、強さ、そして恍惚』は5月3日まで開かれています。
このシリーズは自然そのものというよりも日本人の精神文化の象徴としての雪、月、そして花の美しさをさりげなく表現したものです。三つの作品はそれぞれに美しい高級娼婦花魁とその若き見習い女郎振袖新造を描いています。振袖新造は袖の長い振袖を着ることは許されていますが、自分の部屋を持つことはまだできません。
この作品の主人公は高級娼館として有名な兵庫屋に所属し、「呼び出し」という最高級の格にある花魁の花妻です。「呼び出し」は娼館の外に客を迎えに行きます。人気のある遊女には二人の禿(訳中:かむろ)という少女が仕えることになっています。禿は花魁道中(訳中:花魁が客を迎えに行くこと)にも同行します。この版画では花妻の名の横に、「さくら」「にほひ」という二人の禿の名前も記されています。
かんざしを髪に刺す花妻の横で禿は膝に、古来より月とセットで語られるうさぎを抱いています。ススキが生けられているのも秋らしく、満月を祝う月見の宴を思わせる絵です。
- ビアタ・ロマノウィッツ